水戸地方裁判所 昭和53年(わ)22号 判決 1978年9月07日
本籍
茨城県結城郡石下町大字古間木四三五番地
住居
同県同郡同町大字古間木四三二番地の一
会社役員
筑波一男
昭和一〇年一二月七日生
右の者に対する公務執行妨害、傷害、所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官奥真祐出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金七〇〇万円に処する。
右の罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、茨城県結城郡石下町大字古間木四三二番地の一に居住し、同所及び同所四三五番地において、筑波材木店という名称で木材等の販売業を営み、事業主として事業全般を統轄していたものであるが、
第一、自己の所得税を免れようと企て、売上金の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
一、昭和四九年分の総所得金額が三、九一五万六二七円であり、これに対する所得税額は一、七九二万七、四〇〇円であったにもかかわらず、昭和五〇年三月一四日、同県下館市大字二木成字稲荷塚八二三番地の二所在所轄下館税務署において、同税務署長に対し実父筑波慶名義で昭和四九年分の総所得金額が四四六万一、八二八円であり、これに対する所得税額は五二万円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出するとともに、自己名義で同年分の所得が分離課税の長期譲渡所得のみであって総合課税の所得がない旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一、七四〇万七、四〇〇円を免れ
二、昭和五〇年分の総所得金額が三、七九九万七、〇九九円であり、これに対する所得税額が一、六七九万一四〇〇円であったにもかかわらず、昭和五一年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し実父筑波慶名義で昭和五〇年分の総所得金額が五二〇万円であり、これに対する所得税額が五六万二、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一、六二二万九、三〇〇円を免れ
第二、関東信越国税局査察官近政雄ほか一七名が被告人の実父筑波慶に対する所得税法違反の嫌疑により臨検捜索差押許可状に基づき、昭和五一年八月二四日午前八時三〇分ころから同県結城郡石下町大字古間木四三五番地筑波慶方及び同番地所在の株式会社筑波木材店並びに同所四三二番地の一被告人方居宅等の捜索差押に従事中同日午前九時ころ、同会社裏庭や同会社事務所等において、被告人夫婦の寝室をも捜索したことに腹を立て、査察官黒羽茂(当時四六歳)に対し「この野郎、おれのおっかあが具合悪くて寝ているところに上って調べるとは何事だ、ぶっ殺してやる。」などと怒号しながらじよれん(昭和五三年押第四七号の二)の柄で殴りかかり、頭部をかばった同人の左手首を殴打し、右暴行を制止しようとした査察官早乙女明(当時四四歳)に対し手拳でその顔面を殴打したり、右じよれんでその背部、大腿部等を殴打したりし、居合わせた査察官常田安雄(当時五一歳)及び査察官今村佳章(当時四七歳)に対し「お前が責任者か」と言ってその左顔面を手拳でそれぞれ殴打し、これをたしなめた査察官近政雄(当時四一歳)の左足を野球バット(同押号の一)で殴打する等の暴行脅迫を加え、更に被告人の実弟筑波英及び被告人の長男筑波勇一と共謀のうえ、前記査察官らに対し筑波英において「兄貴はやんな。商売ができなくなる。その代りおれがぶっ殺してやる。」「こいつらをやってもだめだ。こいつらの家族を痛めつけるんだ。」などと怒号し、筑波勇一において「お前ら帰れ」と怒号しながら前記野球バットを振り廻して追いかけ、前記常田安雄を転倒させる等の各暴行脅迫を加え、同査察官らの前記職務の執行を妨害するとともに、右黒羽茂に対し全治まで一〇日間を要する左下腿・左前膊挫傷の傷害を、同早乙女明に対し全治まで三週間を要する右頬部・腰部・右大腿挫傷の傷害を、同常田安雄に対し全治まで一週間を要する左頬部・左上膊挫傷の傷害を、同今村に対し全治まで三日間を要する左頬部挫傷の傷害を同近に対して全治まで三週間を要する両大腿挫傷、左下腿皮下出血の傷害をそれぞれ負わせ
たものである。
(なお、判示第一の各事業年度における実際の総所得金額及び税額の算定については別紙1ないし4の修正損益計算書、別紙56の脱税額計算書記載のとおりである。)
(証拠の標目)
判示冒頭の事実及び第一の各事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する昭和五一年一二月九日対(二通)、同月一四日付、同月一六日付、同月一九日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二六日付(二通)、昭和五三年一月一二日付、同月一八日付各供述調書
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書七通
一、筑波慶、筑波操(二通)、横関芳松、岡田栄一郎の検察官に対する各供述調書
一、石山浩之、岡野忠則、川上潔、篠崎泉一郎作成の各供述書
一、大蔵事務官作成の仕入先別仕入金額調査書、仕入手形、小切手決済金額調査書、現金送金等(仕入決算分)調査書、経費及び未払金調査書、経費(現金分)支払額調査書、接待交際費(四八-五〇)調査書、売上金額調査書売上先別売上金額(答申額)調査書、売上金額(手形、小切手決済)売上先答申分調査書、現金出納調査書、売上金額(手形、小切手決済)売上未答申分調査書、個人収支調査書類、預金及び有価証券残高、受取利息調査書借入金調査書、車輛及び機械の取得調査書、建物取得調査書、不動産取得調査書、売掛金残高(昭和五〇年一二月一日現在)調査書、(株)中央住研売掛金(昭和五〇年一二月一日現在)調査書、受取手形調査書、貸付利息調査書、写真撮影てん末書
一、下館税務署長(三通)、茨城県下館県税事務所長、石下町長作成の各証明書
一、検察事務官作成の電話聴取書
判示第二の事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官(昭和五一年九月四日付、同月九日付)並びに司法警察員(三通)に対する各供述調書
一、水戸地方裁判所下妻支部第二回公判調書中の被告人の供述部分
一、同支部第三回及び第四回公判調書中の証人金田茂の各供述部分
一、同支部第四回及び第五回公判調書中の証人黒羽茂の各供述部分
一、同支部第五回公判調書中の証人土橋一好の供述部分
一、筑波英の検察官(謄本二通)並びに司法警察員(昭和五一年八月三〇日付)に対する各供述調書
一、筑波勇一の検察官(謄本)並びに司法警察員(同月二四日付謄本、同月二六日付、同月三一日付)に対する各供述調書
一、金田茂の検察官並びに司法警察員(同月二五日付(一))に対する各供述調書
一、黒羽茂の検察官並びに司法警察員に対する各供述調書
一、早乙女明の検察官並びに司法警察員(二通)に対する各供述調書
一、常田安雄の検察官並びに司法警察員に対する各供述調書
一、鈴木誠一(二通)、今村佳章、近政雄、手塚喜義、大沢範義、土橋一好、筑波慶、筑波操、菅谷みち子の司法警察員に対する各供述調書
一、司法警察員作成の検証調書
一、臨検捜索差押許可状四通
一、医師小野村雄作成の診断書五通
一、押収してある野球バット一本(昭和五三年押第四七号の一)及びじよれん一丁(同押号の二)
(法令の適用)
判示第一の各所為につき
所得税法第二三八条第一項(併科刑を選択)
判示第二の各所為につき
公務執行妨害の点は刑法第六〇条、第九五条第一項
傷害の点は同法第六〇条、第二〇四条、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号
判示第二の各罪の観念的競合につき
刑法第五四条第一項前段、第一〇条(一罪として重い各傷害罪につき定めた懲役刑で処断)
併合罪加重につき
同法第四五条前段、懲役刑につき同法第四七条本文、第一〇条(刑及び犯情の最も重いと認める判示第二の近政雄に対する傷害罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法第四八条第二項(判示第一の各罰所定の罰金の合算額)
労役場留置につき
同法第一八条
懲役刑の執行猶予につき
同法第二五条第一項第一号
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 草野安次)
別紙1
修正損益計算書
(事業所得)
自昭和49年1月1日
至昭和49年12月31日
<省略>
<省略>
別紙2
修正損益計算書
(総所得)
自昭和49年1月1日
至昭和49年12月31日
<省略>
別紙3
修正損益計算書
(事業所得)
自昭和50年1月1日
至昭和50年12月31日
<省略>
<省略>
別紙4
修正損益計算書
(総所得)
自昭和50年1月1日
至昭和50年12月31日
<省略>
別紙5
脱税額計算書
自昭和49年1月1日
至昭和49年12月31日
<省略>
税額の計算
<省略>
<省略>
別紙6
脱税額計算書
自昭和50年1月1日
至昭和50年12月31日
<省略>
税額の計算
<省略>